奨学金返済支援制度の準備を進める諏訪市職員
長野県の諏訪市は2023年度、市内の中小企業が社内規定を整備し、若手従業員の奨学金返済を支援する場合、企業に補助金を交付する制度を創設する。大学生の約半数が利用する奨学金の返済を応援することで、働きやすい職場環境をアピールし、会社の将来を担う人材の確保や地域への移住定住を促進する狙い。23年度一般会計当初予算案に事業費100万円を計上した。
市商工課によると、県も同様の制度を23年度に創設するが、中小企業と協力して応援する事例は珍しい。同市では10年前から企業の人材不足が慢性化し、企業の発展とイノベーションを担う若者の確保が大きな課題だった。収入が少ない若者の経済的、心理的負担を軽減し、安心して働ける環境を提供することで、UIJターンを推進する。
補助対象は市内に本社・本店を置く中小企業で、製造業や建設業、商業、観光業など幅広い業種で利用できる。就業規則や賃金規定に基づいて奨学金の返還支援を行うことが条件だ。市は、企業が従業員に支払う支援額の2分の1、上限10万円（1人当たりの年額）を企業に最長3年間交付する。従業員は4月1日以降に雇用された30歳未満の正社員で、日本学生支援機構や公的機関の奨学金を返済中の人が対象になる。
労働者福祉中央協議会が18年に実施したアンケート調査によると、39歳以下のおよそ2人に1人は奨学金を利用している。借入額は平均324万3000円で、12・4％は500万円以上。毎月の返済額は1万6880円、返済期間は平均14・7年という。返済に不安を感じている人は正社員の5割強、非正規だと7割強に達する。
同課は「今後、労働人口はますます減少する。就職説明会などの採用活動で若者が安心して働ける職場をアピールし、優秀な人材の確保につなげてほしい。地域への移住・定住にもつながれば」と期待する。市議会の議決が得られれば、市労務対策協議会などを通じて市内企業に周知し、申請の受け付けを始める方針だ。
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