土器の修復に取り組む市立博物館職員の堀さん=同館事務室
長野県駒ケ根市立博物館は、所蔵する土器の修復作業を進めている。多くは1970年ごろのほ場整備事業などに伴い市内で発掘された縄文土器。一部は発掘当時に修復されたものの劣化が進み、これまで展示の機会に恵まれずにいた。再修復後は同館などで公開し、地域住民らにその歴史や価値を広く周知することを目指している。
■市内遺跡から出土 50年以上が経過
同館収蔵庫では縄文時代中期の資料を中心に、同市東中学校裏にある文化財倉庫と合わせて計9万点ほどの考古資料を保存している。そのうち多くを占める土器は、市内約180カ所の遺跡(埋蔵文化財包蔵地)から出土。富士山遺跡(現・同市北割一区)では、関東・東海圏を中心に分布するU字状の文様が特徴的な「加曽利式土器」も見つかっており、遠隔地との交友を示す貴重な史料になっている。
現在所蔵する土器は発掘当時に一部補修されたが、既に50年以上が経過。時間とともに接着部分の石こうがもろくなるなどして損傷が目立っていた。移動や貸し出しの際にも破損する危険性があるため、10年ほど前からは同館でもほとんど展示していないといい、村澤秀樹館長(63)は「駒ケ根市民でも土器の存在を知らない人が多い」と吐露する。
■「もったいない」 堀瑞希さん志願
これまで人手や予算の課題から再修復に着手できない状況が続いていたが、「多くの土器を所蔵しているのに展示しないのはもったいない」と、今年度から勤務する同館職員の堀瑞希さん(25)が作業を志願。専門学芸員の指導を受け、昨年12月から修復を開始した。
土器に施された文様の種類や位置、割れ目を観察しながら破片同士を接着剤でつなぎ合わせ、欠損した部分には樹脂を補填。発掘当時から一度も修復されていない出土品もあり、土の色合いや文様を見て同一の土器を探す。復元により全体像が見えることで、当時の生活や文化の移り変わり、各地とのつながりなどを、より明確に示すことができるという。
学生時代に木彫刻を専攻していた堀さんは、「細かい作業が好きなので楽しい。緊張感やプレッシャーもあるが、破片がぴったり合うと感動する」と笑顔を見せる。現在は通常業務の合間に一人で作業をしており、人手の確保が課題。それでも「進めていくうちに土器の形が見えていくのがうれしい。できる限り修復を続けていきたい」と意欲を語る。
村澤館長は土器の修復について「こつこつと進めてくれて大変ありがたい」と感謝。修復後には展示の機会を設ける考えで、将来的には「市内で発掘した土器を一覧としてまとめた図録や館報を発刊できたら」と期待している。
[/MARKOVE]