国会議事堂前でマスクを外して記念写真を撮る児童たち
新型コロナウイルス感染症の影響で、ここ数年、長野県外から県内へ行き先が変更されるケースが相次いだ小中高校の修学旅行。感染状況が全国的に下火になっていることを受け、諏訪地域の学校では行き先を県外に戻す動きが高まっている。6月下旬、長野県諏訪市豊田小は約2年半ぶりに東京行き修学旅行を再開。コロナ下の修学旅行に同行してみた。
■クラス単位で初の長距離移動
同行したのは6年生50人が大型バス2台に乗って都内を巡る1泊2日旅行。同校では本来、4年時に県庁などを見学する「長野見学」を日帰りで実施するが、感染症の影響で中止になった。今の6年生にとって初のクラス単位での長距離移動だという。修学旅行は県内が続いていたが、4月に保護者に実施したアンケートで賛成が多く得られたため行き先を東京に戻した。
感染拡大防止のため、2日間で全8回検温を実施し、常にマスクを着用。バス内は間隔を空けて座り、車内のレクリエーションは行わない。すべての食事で黙食を徹底。旅程を組む旅行会社は、見学施設が他校や他団体と利用時間が重ならないように配慮した。コロナ流行前は大部屋に10人以上が宿泊するケースが多かったが、「密」を避けるため1部屋2~3人とした。
「ビルが高い」「映画で見たことある」「看板が多い」。初日の早朝に学校を出発した児童たち。中央道から首都高に進んだバスから窓の外に目を向け、高層ビルが立ち並ぶ街並みに声を弾ませた。一般道に下りてからは「横断歩道を渡る人がいっぱい」「警察や警備員が多い」と、普段生活する環境との違いに驚いた様子だった。
■「経験が大切」
修学旅行は文部科学省が定める学習指導要領に記されている課外活動の一つ。他の都道府県の行政機関や施設を見学し、知識を増やして見聞を広める重要な機会。「この年齢の時に日本の政治経済、文化の中心地である東京を知る経験が大切。社会で政治や国会について学ぶので、特に国会議事堂見学は重要」と山崎章光校長。国会議事堂内を見学した児童は「いつも国会中継で見る場所だ」と話しながら衆議院の議場を見つめていた。
国立科学博物館見学や江戸風鈴の絵付けを体験し、赤坂のホテルに宿泊。2日目は豊洲の職業体験施設「キッザニア東京」でさまざまな職業を体験した。東京タワーで眺望を楽しんだ後は、お小遣いをやりくりしながら保護者へのお土産を購入した。
■「小学校生活で一番の思い出」
すべての行程を無事に終え帰りのバスに乗り込んだ児童たちは、制限がある中でも重要な経験を得た様子。「有名なテレビ局がいっぱいだった」「寝る前に友達とおしゃべりしたのが楽しかった」と印象に残ったことを述べた。
生徒の一人(11)は「すごくいい思い出ができた。東京に行けてよかった」と笑顔。母親は「自分も修学旅行は小学校生活で一番の思い出。国会議事堂を見てほしかったし親元を離れる経験もしてほしかったので、東京に行って良かった」と話した。
山崎校長は「むやみに感染症を恐れず、正しく理解し対策することが大切。子どもたちは東京に行かないと感じられないことが得られたのでは」と話した。
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