海外向けのラベルを貼り、出荷用の箱に詰める担当者=諏訪市、宮坂醸造
長野県内を含め中部5県(長野、愛知、岐阜、三重、静岡)から昨年1年間に海外へ輸出された日本酒が金額、数量とも1988年以降、33年間で最高となったことが名古屋税関のまとめでわかった。10年前と比べて金額で10倍以上、数量も約7倍と大きく伸長。香港、中国、米国を中心に「和食を提供する飲食店が増えたことが主な要因」(同税関)という。
5県からの輸出額は8億9千万円、輸出量は806キロリットル、一升瓶(1.8リットル)に換算して約44万8千本に上る。この10年間はほぼ右肩上がりで増え、特に昨年は前年比2倍近く伸びた。
輸出先国はアジアが全体の8割以上で香港、中国がそれぞれ約3割を占める。続いて米国、韓国が約1割。昨年の輸出数量の伸びを国別にみると香港は前年比344.8%、米国が同265.1%、中国が同176.5%。韓国、スウェーデンも前年を上回った。
長野県諏訪地方では、1980年代から輸出を手掛ける宮坂醸造(諏訪市)も海外への出荷量は年々増加しているという。自社ラインアップのほぼ全商品を世界25カ国に出し、昨年はコロナ禍前の2019年と比べても130%と伸びた。
ほとんどが和食レストランへの提供で、日本酒本来のうまみ、蔵の個性がわかりやすい純米系が人気。同社海外営業部のキース・ノーラム部長は「素材を選ばず、あらゆる料理に合うバランスの取れた深みのある味、年ごとにブレがない安定した品質が信頼を得て、弊社の酒を好んでくれる人が増えた」と喜ぶ。
ただ一昨年来、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う物流の混乱は深刻で、受注量が安定せず、先が読めない苦労も生じているという。
「国によっては物流が滞ることを見越して必要以上の数量を発注したり、コンテナの空き状況に応じて急きょ注文を寄せるケースも多い」と同社。「突然、短期間で大量受注に応じなければならず、準備にてんてこまいすることもある」という。名古屋税関のまとめで昨年、輸出量が前年比443.1%となったカナダでの急伸長も、「親日の需要増とともに物流混乱も影響したのでは」(ノーラム部長)とみる。
とはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に都市封鎖や飲食店の営業抑制を余儀なくされる中でも需要は好調。「まだワインほどの世界的認知はなく、愛飲家はごく一部」(ノーラム部長)と今後の伸びしろに大きく期待を寄せている。
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