諏訪市博物館で調査を続ける長谷川准教授(右)ら
諏訪湖の御神渡り(御渡り)の結氷記録のデータベース化に取り組むお茶の水女子大学(東京都)の長谷川直子准教授(47)、帝京大学(同)の平野淳平准教授(40)らが長野県諏訪市博物館収蔵の古文書を調査している。諏訪社の頂点に位置した神職、大祝の日記などの書類から御神渡りに関する記述を探し、記載内容を読み込んで当時の結氷状況などを拾い出す。同館で4日まで続ける予定。
両准教授と東京都立大(同)の三上岳彦名誉教授が取り組んでいるのは、諏訪湖の結氷、御神渡りの出現に関連し、すでに公表されている資料を基にした記録の再検証。科学研究費助成事業を活用し、2019年度から進めている。1443年から現在まで ほぼ途切れることなく受け継がれた記録などはすでに確認。一部に見られる結氷日などが不明確な年について日記などの資料を基に必要なデータを追加する。
579年もの長期にわたる湖の連続した結氷記録は世界的にもほとんど例がない。御神渡りの記録は世界の研究者がそれぞれの分野での研究に活用されているが、その際引用しているのは1954年発行の藤原咲平・荒川秀俊両氏のデータベース。長谷川准教授らは記録の再検証とともに両氏のデータベースに反映されていない直近の約70年分を盛り込んだ最新版に更新する。来年度中の完成を目指している。
博物館での調査には、両准教授と歴史分野の研究に取り組む学生3人の計5人が参加。日記は御神渡りのことだけを記載しているわけではないため、両准教授が記載場所を探し、学生が記載内容を読んで必要事項を拾い出す。今調査の対象期間は江戸時代前期の1655年から1871(明治4)年まで。
調査にかかわる同大大学院1年の学生(23)は「膨大な資料で量に圧倒されるが最後まで頑張りたい」、平野准教授は「原本を調べる大切さを改めて感じる」と語る。長谷川准教授は「大祝の日記には冬季のさまざまなことが書かれている。そこから御神渡りだけを見つけるので大変。今後、多くの研究者が活用する可能性があるデータベースの作成のための調査なので慎重に取り組みたい」と話した。
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