山出しの曳行中止に伴い、木落しも見送られる。写真は前回の下社山出し。男たちを振り落とし、急斜面を豪快に滑り下る秋宮一之御柱=2016年4月、下諏訪町
コロナ禍で迎える今春の諏訪大社式年造営御柱大祭(御柱祭)で、4月の上社、下社の山出しが氏子による曳行ではなく、トレーラーなどで運搬とすることが22日、明らかになった。上社大総代会でつくる上社御柱祭安全対策実行委員会(笠原透委員長)と長野県岡谷市、下諏訪町、諏訪市上諏訪の大総代でつくる御柱祭下社三地区連絡会議(小林正夫会長)が同日、諏訪市の諏訪大社上社本宮で会見を開いて発表。ともに「苦渋の決断」と悔しさをにじませた。
昨年11月に発表した御柱大祭実施に関するガイドラインでは、県の感染警戒レベル「4」以上の場合、「氏子による曳行は行わず、機械力を導入して運搬する」と明記した。トレーラーなどによる運搬は、ガイドラインに沿った対応となる。
会見で笠原委員長(75)=諏訪市中洲=は「氏子の安全を第一に考え、曳行を諦め、ガイドラインを順守する」、小林会長(72)=同市大和=は「まん延防止等重点措置が3月6日まで延長され、準備や活動が制約を受けている。山出しの参加者を感染から守ること、準備や練習が不足する中で担当役員の安全を守ることが保証できない」と述べた。
山出しの最大の見せ場である上社、下社の木落しは行わない。上社の川越しは御柱が宮川の中を渡る形では行わないが、橋上で宮川の水で御柱を清めるなど「(運搬でもできる)川越しのやり方を今後考えていく」(笠原委員長)。
運搬は上社が当初予定の3日間のうちの1日、下社は3日間のうちの1~2日で行う。上社は2本ずつ運ぶ方針。下社は検討中。曳行の際に上社の御柱に取り付けられるメドデコは運搬時、取り付けずに運び、御柱屋敷で里曳きに合わせて取り付ける。上社は19日、下社は21日までに開いた大総代の会議で最終決定した。
上社は曳行開始地点である茅野市、原村境の綱置場から同市安国寺の御柱屋敷まで、下社は下諏訪町大平の棚木場から同町東町上の注連掛までそれぞれトレーラーなどの車両で運ぶことになるが、運搬ルートは調整中。上社のルートは曳行路の一部区間が道幅などの関係で御柱を運ぶ大型車両が通れないため、新たなルート設定が必要になる。下社は木落し坂上付近までは曳行路を通るが、木落し坂下から注連掛にかけては国道を通り、注連掛にはクレーンなどを使って移動させる案を軸に調整を進めている。
里曳きは感染対策を取りながら氏子による曳行、建て御柱の実施を目指す。会見で笠原委員長は「何としても里曳きを皆さんで曳行するために山出しの曳行を断念した」と語った。小林委員長は「里曳きに懸ける。ワクチン接種は4月までにだいぶ進むと思う。氏子による曳行を願う」と語った。
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