青天の下で「ザザムシ漁」を行う中村昭彦さん=伊那市の天竜川本流
長野県伊那谷の冬の風物詩「ザザムシ漁」が、天竜川漁業協同組合(伊那市)管内の天竜川水系で始まった。解禁日の1日は雨による川の増水で漁ができなかったが、2日には水量が減少。漁を待ちわびた組合員が川へ立ち入り、川底をかき回して石の表面に生息する水生昆虫を捕獲した。
ザザムシはトビケラやカワゲラなどの幼虫の総称。上伊那地方では昔からつくだ煮にして食べる。この日は漁歴約40年の中村昭彦さん(77)=伊那市=が、長靴を履いて市内の天竜川本流に立ち、備中ぐわで石をかき回すと、流された虫が下流に置いた四つ手網へ入った。
中村さんによると、今年は8月の豪雨により大水が出て虫が大量に流された他、川の流れが変化し、例年多くの水揚げがあった漁場が干上がった。このため初日の収獲量は「前年より少なめ」だった。
「昔は10年に一度と言われた大雨が最近は毎年降るようになり、気候変動を肌で感じる」と中村さん。一方、近年の昆虫食ブームでザザムシの需要は増加傾向で「若い人からも漁を教えてほしいと声が掛かる。伊那谷にしかない食文化。 伝統が消えないよう漁や食べ方を継承したい」と話した。虫は水温が下がるほど味が良くなるという。漁は2月末まで。
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