川崎重工業が開発を進めている無人VTOL機の試作機
無人垂直離着陸(VTOL)機による山小屋への物資輸送サービスを構築するプロジェクトを進める長野県伊那市と川崎重工業(東京)は1日、2026年度の実用化を目指す方針を明らかにした。山岳特有の気象状況に適応し、長い距離と大きな標高差を安定して飛行できるVTOL機を使い、ヘリコプターに代わる荷揚げの仕組みをつくる。今年度から5年間の計画で輸送システムの構築を進め、ビジネスモデルの確立を図る。
市によると、山小屋への荷揚げは主にヘリコプターで行っているが、パイロットの不足や事業者の撤退で確保が難しく、山岳特有の天候の急変も課題になっている。
VTOL機は小型無人機ドローンより重い荷物を高速で長距離運ぶことができる。同社が開発中のVTOL機はエンジンで駆動し、運べる荷物の重さは100キロ以上、継続航行距離は100キロ以上、上昇能力は2000メートル(標高耐性3100メートル)。量産も見据えた機体といい、22年度中頃の完成を予定している。
プロジェクトでは、中央アルプスの西駒山荘、南アルプスの仙丈小屋、塩見小屋への荷揚げを想定。物資輸送のための固定空路を構築する。主な輸送品はガスボンベ、発電機、軽油、食料品、雑貨など。21、22年度に飛行ルートの設定、23年度から実際に物資を輸送する実証を行い、26年度の実用化を目指す。
市役所で開いた記者会見で、白鳥孝市長は「山小屋はみんな困っている。実用化できれば山への荷揚げだけでなく、離島への輸送や建設、農林業などあらゆるところで活用できる」と期待を寄せた。同社の石田正俊執行役員は「山小屋の皆さんの大変な努力で自然や登山者の安心安全が守られている。そうした社会課題に対しVTOL機で貢献したい」と述べた。
同日は試作機の展示も行われた。メインローターの直径は6メートル、ボディーはカーボンファイバー製で、機体の重量は340キロ。プロジェクトで用いる機体とは異なる。
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