大部屋を個室のように仕切る間仕切り=赤岳鉱泉
今月22日からの4連休を皮切りに、本格的な夏山シーズンが幕を開ける。新型コロナウイルスの影響で感染対策に追われた昨年に引き続き、各山小屋では今年も宿泊定員を半分ほどに制限して完全予約制とするほか、食堂の机にアクリル板を設置したり、受け付け時に検温や体調を確認したりするなどの感染対策を講じた上で営業を行っている。2年目を迎えるコロナ禍での山小屋の取り組みを取材した。
■消毒、仕切り板 啓蒙活動にも力
八ケ岳連峰の主峰・赤岳(2899メートル)などへの登山道上に位置する赤岳鉱泉(茅野市)は、専門医の指導を受け、感染対策に取り組んでいる。各部屋や廊下など各所に消毒用アルコールを置いたほか、館内のトイレの個室には便座除菌クリーナーを設置した。換気面では、「密」になりやすい食堂や大部屋などに換気扇を新たに13台取り付けた。スタッフの感染予防にも気を付けており、トイレ掃除の際にはスタッフは雨がっぱを着用して掃除を行っている。
赤岳鉱泉は、今年2月にアイスクライミングや冬山登山の魅力を伝えるオンラインイベントを開催するなど、コロナ禍に対応した山岳安全啓蒙活動にも力を入れている。赤岳鉱泉主人の柳沢太貴さん(33)は「コロナと共存し、日々新しい対策に取り組むことが大切」としている。
感染者を出して山小屋が閉鎖になることは絶対に避けたい―。中央アルプス宝剣岳(2931メートル)近くにある宝剣山荘(宮田村)は、利用客を迎える準備を進めている。県外からの宿泊客や観光客も多く、感染対策が今年も大きな課題となっている。
宿泊定員は半数以下の40人近くに縮小。部屋や食堂、手すりなどの消毒や換気を徹底し、食事の回数を増やして食堂に集まる人数を減らすなど「三密」にならない対策に取り組んできた。支配人の千島浩聡さん(47)は「今夏が踏ん張りどころ。中アのきれいな景色を多くの人に見てもらうために、気を緩めず最善の努力をしていきたい」と話している。
伊那市の第三セクター伊那市観光が運営する南アルプスの北沢峠こもれび山荘、仙丈小屋、塩見小屋、中アの西駒山荘も定員を半分ほどにして2年ぶりに営業する。ただ南アでは、同市長谷の戸台口と北沢峠を結ぶ市営南アルプス林道バスが昨年7月の豪雨に伴う災害復旧のため、道中の歌宿までの運行となっている。このため、市は鹿の沢地籍の林道工事箇所から北沢峠までの区間でシャトルバスを運行することを決めた。シャトルバスは南ア林道バスとの接続に合わせて運行する。
■登山者の対策 意識にも変化
山小屋側が感染対策を徹底して登山者を迎え入れている一方、感染対策を意識して登る登山者も少なくない。友人と3人で赤岳を訪れた20代の男性登山者は、移動時の車内の換気にも気を付けるようになったという。また、感染対策として寝袋の持参を求める山小屋も多いことから、宿泊する際にシュラフを持つ機会も増えたという。「街と変わらない感染対策に頭が下がる思い。自分自身も持ち込まないよう気を付けたい」と話していた。
■山小屋支援へ 県がCF実施
山小屋の中には、感染対策やヘリコプターによる荷揚げ費高騰などを背景に、宿泊費の値上げに踏み切るところも多い。こうした厳しい経営環境に置かれている山小屋を支援するため、県は「信州の山小屋応援プロジェクト」と銘打ったクラウドファンディングを実施している。目標金額は1500万円で、寄付金は各山小屋に配分し、感染対策や山岳の環境保全、登山道の維持管理に活用される。
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