氷斧で湖面に張った氷を割る観察総代。「もう1週間早ければ」とこぼした
長野県諏訪市豊田の諏訪湖で続く八剱神社(同市小田和)の御神渡り(御渡り)観察は、きょう2日で4週間を迎える。同神社の宮坂清宮司(72)が過去の記録を改めて調べたところ、2月以降に行われた御神渡りの拝観式は明治以降の155年間に29回あった。「昔と今とは気候の状況が変わっている」と地球温暖化の傾向を実感しながらも、立春すぎの御神渡り出現を願い、過去の記録にいちるの望みをつないでいる。
御神渡りが出現しない「明けの海」は、室町時代の1443(嘉吉3)年冬から昨季までの579年間で78回。このうち40回が昭和以降に確認されている。1日朝には今季4回目の”全面結氷”を確認したが、今季も結氷が続かない厳しい状況にある。
しかし、諦めるのはまだ早いという。
2月の拝観式を年代別に見ると、明治と大正がそれぞれ5回、昭和は15回、平成が4回を数える。発生確率は明治11.4%、大正35.7%、昭和23.8%、平成13.3%で、御神渡りが出現した回数を分母にすると確率は30~40%台に跳ね上がる。
最も遅い拝観式は1920(大正9)年の2月27日だった。それに次ぐのが17(大正6)年2月23日で、1週間前の2月15日から3日間には所沢陸軍航空飛行隊が諏訪湖で氷上 飛行訓練を繰り広げている。同神社が書き継ぐ記録にも記述があり、湖岸のにぎわいを「立錐の余地もなき数万の人出なり」と記した。氷厚の記録はないが「1尺(約30センチ)はあった」と見られている。
同神社の観測で1日午前6時30分時点の気温は氷点下9度、水温は0.5度だった。2日続けての厳しい冷え込みだったが、前日の日中に割れた氷が岸に打ち寄せられ、同市豊田の舟渡川河口付近から沖合70~80メートルに折り重なった状態。厚さ10センチの場所もあるが、さらに沖は3ミリ程度の「一夜氷」とみられる。
宮坂宮司は「諏訪湖の冬らしい風景が広がっている。自然は正直。自然に寄り添い、希望を持って観察を続けたい」と話す。御神渡り出現の可否は4日に最終判断する予定だが、その後もしばらく観察総代と宮司で観察を続けるという。
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