人工培養苗の販売。2年目の今年は延べ336人が購入した=6月中旬、富士見パノラマリゾート
長野県富士見町内の釜無ホテイアツモリソウ自生地で近年、ハエによる種子の食害が散発していることが分かった。ハエの種類は鑑定中だが、ラン科植物に寄生するランミモグリバエとみられ、全国的に野生ランの被害が深刻化する。希少種の保全再生に取り組む町アツモリソウ再生会議は、個体数の減少につながりかねないとして対策の強化に乗り出す考えだ。
神戸大学などの研究チームによると、ランミモグリバエは体長3ミリほどで、ランの果実に産卵し、ふ化した幼虫は種子を食べて成長する。羽化の際にさや(果実)を食い破って出ていくが、再生会議によると、町内の自生地でも数年前から、穴の空いたさやが見られるようになった。
26日に役場で開いた再生会議の総会で報告し、早急に対策を講じることを決めた。防除は農薬散布と開花直後の株への袋がけが主だが、自生地に農薬はまけず、来年の開花期に袋がけの対策を実施する方針を確認。年度内には環境省に必要な許可を申請する。
再生会議は町と識者、富士見高校、食品メーカー・ニチレイなどで構成。総会では今年の自生状況や巡視、監視活動の報告もあった。2年目となる人工培養苗の販売は6月中旬から7月上旬まで富士見パノラマリゾートで行い、延べ336人が購入。売り上げは約340万円だった。収益は自生地の保護や啓発活動に用いるため、「苗販売が活動の延長線上にあることをさらにPRしたい」とした。
中山洋会長は、大雨と斜面崩落による株の消失など異常気象の影響も危惧し、「課題は山積しているが、(保全再生へ)地道に一歩一歩進んでいきたい」と話した。
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