諏訪湖では至る所で天然ガスが湧き、近年まで燃料として使用されてきた。一方、釜穴から湧出するガスの主成分や起源、放出後の動態などは分かっていなかった。
グループは長野県諏訪市豊田沖合の釜穴と、信大諏訪臨湖実験所(同市湖岸通り)前の桟橋付近で湖水や湧出ガス、気泡を採取。炭素の安定同位体と放射性同位体の存在比を解析した結果、釜穴から湧出するガスの主成分が、湖底の地下数百メートルに蓄積する炭素起源のメタンであることを突き止めた。
湖底の表層でもメタンは生成されるが、湖面凍結を防ぐほどの量はない。一方、深い層にはガスが大量にたまっているとみられ、断層などを通じて湖面に流出し、凍結を防いでいると考えられる。
論文著者の1人で信大理学部の朴虎東(パク・ホードン)教授によると、地下の炭素は約3万年前に湖底に堆積した植物遺体などが由来とみられる。ガスとして水中に放出された炭素をアオコが利用していることも判明。藻類を餌とする水生生物を介して、地下の炭素が生態系の食物連鎖に影響を与えていると考えられるという。
メタンは二酸化炭素の20~30倍の温室効果を持つ。諏訪湖周辺への影響について朴教授は「今後研究を行っていく」としている。[/MARKOVE]