公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」 理事長・杉本彩さん(NBSスタジオ 2022年3月)
警察庁の発表によりますと、去年(2021年)1年間に、ペットを捨てたり、劣悪な環境で飼育するなど「動物虐待」で摘発されたのは170件にのぼり、過去最多だったことが分かりました。公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」の理事長・杉本彩さんに摘発件数が増加した背景や今後の課題などについて聞きました。
■動物虐待摘発 過去最多170件
犬虐待事件の家宅捜索(2021年9月・長野県松本市)
去年1年間に、全国で、動物愛護法違反容疑などで摘発されたのは170件にのぼり、過去最多となりました。おととし2020年の摘発件数(102件)から大幅に増えました。
検挙された事件の中で最も多かったのは、飼っていたペットを捨てるなどの「遺棄」で81件でした。続いて餌を与えなかったり治療をしないなどの「虐待」が48件、動物に危害を加える「殺傷」が41件でした。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛により、ペットを飼う人が増え、その結果、捨てられるペットも増えた可能性もあります。
■長野・松本市で販売業者が425匹虐待 公判中
施設で飼育されていた犬
長野県内では去年11月、松本市の施設で多数の犬を劣悪な環境で飼育し虐待したとして、市内の元犬販売業者の社長が逮捕され、その後、起訴されました。起訴状では、市内2カ所の施設で合わせて452匹の犬を衰弱させる虐待を行ったとされ、動物愛護法違反の罪で起訴されました。
この事件は、現在、公判中で公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」が、より罪が重い動物愛護法違反の殺傷などでの起訴を求めていてました。警察は4月8日、社長を動物愛護法違反の殺傷の疑いで書類送検しました。警察によりますと、被告は、獣医師資格を持っていないにもかかわらず、犬に対して麻酔をせずに腹を切開した疑いです。
動物愛護法を巡っては、おととし(2020年)改正され、罰則が引き上げられるなどしました。近年、動物虐待事件が増加傾向にありますが、動物愛護に対する関心が高まっている影響で、警察への通報が多いことが増加の一因とみられています。
■「動物虐待」摘発が増加した背景は
動物愛護管理法の主な罰則
「動物虐待」で摘発件数が増加している背景や今後の課題などについて、公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」の理事長・杉本彩さんに聞きました。
Q.動物虐待の摘発が増加した背景は
動物虐待は許されないれっきとした犯罪だということが社会に周知され、それにより通報が増えたことが背景にあると思います。これは、動物愛護団体の市民への啓発活動と、動物虐待を刑事告発してきた成果ではないでしょうか。刑事告発してはじめて事件化する事案も多く、それにより事件に注目が集まることで、動物虐待に対する社会の目がより厳しくなりました。それが通報や内部告発というアクションとなり、摘発に繋がっていると思います。
Q.改正動物愛護法の効果は
摘発数が増えたのは、動物虐待の厳罰化が根底にあるからだと思います。(動物殺傷罪の罰則は)200万円以下の罰金が500万円以下に、2年以下の懲役が5年以下に、倍以上の法定刑の引き上げが実現したことで、動物虐待は重い犯罪であると法律が示しました。警察は法律に従って動きますから、法改正により軽微な犯罪ではなくなった動物虐待を、軽視できないという状況があると思います。したがって、確かな証拠があれば、警察が厳正に捜査をしてくれる。これは大きな効果です。
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