氾濫した茅野市高部の下馬沢川周辺。周囲には大きな石や流木も見え、県道岡谷茅野線下馬橋周辺では重機での復旧作業が進む=6日午後4時31分(地元の許可を得て上流から下流に向かいドローンで撮影)
長野県茅野市や諏訪市で起きた5日夜の局地的豪雨で、茅野市宮川高部を流れる下馬沢川の上流で土石流が発生したことが6日、分かった。大量の土砂や流木が流出し、高部で建物全壊8軒などの被害が出た。近くを走る県道岡谷茅野線は通行止めになった。市は高部と安国寺の住民に出した避難指示を6日も継続した。けが人は出ていない。
市によると、6日時点で把握した建物被害は64軒。内訳は高部で全壊8軒、半壊1軒。他に高部、安国寺、西茅野、ひばりケ丘で、一部損壊1軒、床上浸水2軒、床下浸水52軒を確認した。ただ、建物の被害状況は「さらに精査したい」としている。農林業施設への被害や水田崩落も出た。
下馬沢川は、諏訪南行政事務組合が高部で運営する火葬場「静香苑」の近くを流れる一級河川。大きな石を含む土砂や流木が河川を埋め、県道岡谷茅野線に架かる下馬橋などに押し寄せた。建設業者らが土砂撤去を進め、同県道の高部交差点│高部東交差点間を除き6日夜の通行止め解除を目指している。同日会見した今井敦市長は「警戒していた場所だが、これほどの状況になるとは予想していなかった」と述べた。
県諏訪建設事務所によると、下馬沢川上流の山腹の渓岸で複数の土石流が発生し、中流域から下流(宮川との合流地点)まで土砂が堆積したため河川が氾濫し、土砂も一緒にあふれ出たとみられる。上流には高さ6・4メートル、幅26・2メートルの砂防えん堤1基と、河床の土砂が削られるのを防ぐ「床固工」2基がある。これらが一部の土砂をせき止めたが、これを上回る土砂が流れ出たという。
砂防えん堤は1983年に設置され、下馬沢川には流路工も整備されている。流路工の一部はコンクリートだが、大半は石積み。上流部には土砂流出を感知するワイヤセンサーを近く設置するほか、えん堤がせき止めた土砂や不安定土砂の撤去などを行う考えだ。
市によると、5日夜から継続する避難指示の対象は高部と安国寺の459世帯1084人。5日夜時点で他地区も含めて最大54世帯114人が避難した。6日午後4時30分現在、中央公民館や宮川地区コミュニティセンターに計25世帯49人が避難している。市は避難が長期化する可能性があるとして、希望を確認した上で避難場所としてホテルなどを用意する考えを示した。
静香苑に設置してある雨量計の最大時間雨量は5日午後7~8時の35ミリ。最大累計雨量は降り始めからの9時間で135ミリを観測した。
この他、大雨の影響で県道上槻木矢ケ崎線は路肩決壊のため茅野市玉川の大泉山信号付近が片側通行となっている。同市宮川の杖突峠も倒木で一時全面通行止めになった。
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