マスクを着用し遊ぶ子どもたち
新型コロナウイルス感染症対策でマスクの着用が日常化する中、熱中症の危険性が高まる季節を迎える。体温を調節する機能が低く、熱中症のリスクが高い高齢者や小さな子どもには新型コロナ対策と熱中症対策の両立のために、周りの気付きも重要になる。新型コロナ下での2度目の夏をどう乗り切るか―。伊那中央病院(伊那市)の救急看護認定看護師に、必要な対策を聞いた。
■マスクの着用で渇き感じにくく
同病院によると、マスクの着用と熱中症の因果関係は不明だが、マスクの着用により湿気がこもり、喉の渇きを感じにくくなったり、脱水に気付きにくくなったりするという。さらにマスクを着用したまま運動を行うと、心拍数や呼吸数、血液中の二酸化炭素濃度や体感温度が上昇することで体への負担が大きくなり、熱中症のリスクが高まるとみる。
特に体温を下げる汗腺が十分に発達していない小学校低学年以下の子どもの場合は、体の中から熱い息を出して新鮮な空気を吸い込むことで体を冷やしているため、より注意が必要。同病院では「マスクにより顔色や呼吸状態が分かりにくいことで異変に気付くのが遅れる可能性がある。周囲の大人が時間を決めて、意識して水分を取らせてほしい」としている。
大人数で行動することが多い学校では、新型コロナ対策と熱中症対策の両立に苦労している。
伊那市内の小学校では、エアコンを使用中も小まめな換気を実施。体育の授業や運動時は感染予防に配慮した上で、児童にマスクを外すことを勧めるなど熱中症にも注意している。
■「環境」と「行動」「からだ」の観点
新型コロナ対策を意識しながら熱中症対策をしていくために、同病院では「環境」と「行動」、「からだ」の観点から対策を提案している。気温が28度以上、湿度が60%以上のときは小まめな温度調整が必要になると指摘。行動面では▽外出は暑い時間を避ける▽帽子や日傘を使って直射日光を避ける▽運動や負荷の掛かる作業を行うときは人と2メートル以上の距離を保ちマスクを外す▽休憩を小まめに取り、喉が渇く前に水分補給をする―などを勧めている。
普段からバランスの取れた食事と十分な睡眠を取り、体調を整えておくことや、暑さに備えた体づくり、涼しい時間に軽く汗をかく程度の運動をし、暑さに慣れておくことが重要とした。
■高齢になるほど重症化のリスク
上伊那広域消防本部によると、管内(上伊那8市町村)で2020年に熱中症で救急搬送されたのは76人だった。19年は81人、18年は127人で総数は減少しているが、いずれも65歳以上の高齢者が半数以上を占めている。
同病院によると、高齢になるほど熱に対する感受性や体温調節機能、活動レベルが低下する傾向にあり、糖尿病や高血圧、認知症などを患っている割合も高く、屋内で発症し、重症化するリスクが高くなるという。対策としては、定期的な水分補給と屋内の温度や湿度の小まめな調節、熱のこもりにくい素材の衣類で過ごすことが大切―と呼び掛けている。
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