防護柵の増設など今年度事業を決めた南アルプス食害対策協議会
高山植物の食害被害低減に取り組む南アルプス食害対策協議会は24日、長野県伊那市役所で開いた。食害の原因となるニホンジカ捕獲の昨年度実績の報告があり、伊那市や下伊那郡大鹿村など4市町村の南ア地域での捕獲数は前年度比94頭減の318頭。一時期に比べ大幅に減っており、警戒心が強くなった「スレジカ」の増加などが要因とした。これに伴い、捕獲継続やシカの侵入を防ぐ柵の増設などを盛り込んだ今年度事業を決めた。
事務局の伊那市耕地林務課によると、自治体の捕獲頭数は2021年度412頭、20年度320頭、19年度と18年度はともに185頭。直近では増加傾向にあるが、10年ほど前は千頭以上を捕獲した年もあった。協議会では、降雪量の減少などから「亜高山帯よりも高い場所で通年生息する個体も確認されている」として高山帯での捕獲継続の必要性を指摘する発言もあった。
今年度も猟友会と連携し継続する捕獲事業では、一部のわなの設置場所を変更するなどして対応する。防護柵は、南ア仙丈ケ岳の馬の背周辺と仙丈小屋周辺を中心に、南ア山域全体で実施。環境省からの請負事業として、仙丈ケ岳から大仙丈ケ岳の中間に新たな柵も設ける。
会合では、信州大学農学部(南箕輪村)の渡邉修准教授(53)が馬の背で11年ぶりに実施した植生調査についても報告した。柵の設置を始めた08~11年と比べ、柵内の植生の種類にほぼ変化はないが、イネ科植物が増加傾向にあるなどとし、今後の気象条件によって「イネ科による草地化が進む可能性がある」とも指摘した。
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