サイフォン式の器具でコーヒーを淹れる マスターの中村利邦さん（84）
昭和の香りを残す喫茶店。前身の食堂から60年余り続いた長野駅前の喫茶店が、まもなく閉店する。惜しむ声に感謝しながら、84歳のマスターは昔と変わらぬコーヒーで客を迎えている。
【動画で見る】84歳店主「これが私の道」 惜別…駅前“昭和の喫茶店”閉店へ 一杯、一杯、丁寧に 45年変わらぬ味
■一杯、一杯、丁寧に
三本コーヒーショップ
市民が行き交う長野駅前。そこから路地を少し入ったところに、ツタが生い茂った建物がある。三本コーヒーショップ。
三本コーヒーショップ マスター・中村利邦さん（84）：
「舞台裏は見てもらいたくないんだよな（笑）」
開店の準備するマスターの中村利邦さん（84）。
慣れた手つきで扱うのは、蒸気圧を利用してコーヒーを入れるサイフォン式の器具。
マスター・中村利邦さん（84）：
「コーヒー専門店ということで、コーヒーを作ることに対しては自分たちで全部やってる」
オリジナルブレンドコーヒー 500円
午前10時に開店。店内はコーヒーの香りで満ちている。
マスター・中村利邦さん（84）：
「甘みとか、酸味とか渋みとか、そういうのが出てきますから、それぞれ特徴のあるコーヒーの味を出すわけ。『サイフォンだて』というのは粉入れて抽出する。その抽出する時間が一番肝心なこと」
一杯、一杯、丁寧に―。
■84歳店主「この先、やっていけるか」
三本コーヒーショップの店内
レトロな設えで穏やかな時間が流れる店内。
でも、この空間に浸れるのも残りわずか。
マスター・中村利邦さん（84）：
「この先、やっていけるかどうか。そういう維持ができないから、もう辞める時期じゃないかと判断したんですよ」
84歳と高齢になり後継ぎもいないことから中村さんは、5月20日で店を閉めることにした。
閉店を惜しんで多くの客が
閉店を惜しんで多くの客が訪れている。
長野市内から：
「実はきのうの閉店の時もいまして、2日連続で。もうちょっと残してくれないかなっていう気持ちになりますね」
■食堂からコーヒーショップに
1950年、中村さんの父が自転車預り所を開業 提供：三本コーヒーショップ
店の始まりは、昭和25（1950）年。中村さんの父が向かいの映画館を訪れる客を相手に、自転車預り所を開業。
1959年、大衆食堂「千石屋食堂」を開店 提供：三本コーヒーショップ
やがて映画全盛期を迎えると、大衆食堂「千石屋食堂」に変えた。
1972年、食堂を洋食のレストランに（三本コーヒーショップの記録より）
昭和47（1972）年、食堂を洋食のレストランに模様替えしたのが、2代目の中村さん。
マスター・中村利邦さん（84）：
「何かに的を絞ってやるかと。洋食にして、周りに飲み屋さん多いけど、うちはワインをやろう」
おしゃれな店内とメニューで差別化を図ったが、周りの店との競争は激しくなる一方。
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