「遺跡のファン」になってほしいと願いつつ、子どもたちに暖かなまなざしで指導する文化財課の堀川洸太朗さん(右)と吉村瑠来さん(右から2人目)=茅野市の永明中学校校庭遺跡
「きょうの体験が思い出づくりになれば」。発掘調査が進む長野県茅野市塚原の永明中学校校庭遺跡で20日、子どもたちを対象にした発掘体験があった。「先生」役になり子どもたちを指導したのは市教育委員会文化財課の20代職員2人。「遺跡のファンを増やしたい」との願いを込め、年齢がさほど離れていない子どもたちにアドバイスした。
2人は堀川洸太朗さん(28)=茅野市=と吉村瑠来さん(25)=原村。
吉村さんは小学4年生のとき、尖石縄文考古館(同市)の土器作り講座に参加。中学時には村の遺跡調査に携わるなどして、奈良大学文学部文化財学科へ進学した。
「家の周りで土器などを拾ったこと」が考古学の道へ進むきっかけになったといい、地下にこうしたものが埋まっている―という驚きも背中を後押ししたという。
「遺跡は身近なもの。文字のない時代の物の形状や材質などを情報として蓄積、比較していくと、その地域の特徴も分かってくる」。文化財課に配属され2年が終わろうとする吉村さんは「役割は遺跡保護とファンを増やすこと」とする。
20日の発掘体験は午前と午後の部の2回行われ、午前の部には子どもたち7人が参加した。弥生時代の住居跡に入り、小さなスコップなどで土を削ると土器片が次々と見つかった。
永明小4年の児童は「(作業の)最初はあまり見つからなかったけれど、途中から土器が見つかり面白かった。昔のことが分かって良かった」と笑顔。楽しそうだからと参加した宮川小3年の児童は「もっと体験してみたい」と意欲的だった。
作業終了後、堀川さんは子どもたちが真面目に取り組む姿勢を褒め、今後予定している見学会の参加を促したほか、この日出土した遺物を展示、紹介できればいい―としていた。
同課の小池岳史係長(56)は自身の経験も踏まえ「土器や黒曜石を拾ったり、他人よりいいのも拾おうとする気持ちが”考古ボーイ”を生み出すことになるのではないか」とし、この発掘体験が「世代をつなぐ一助になってもらえればうれしい」とした。
発掘体験は市中央公民館が子どもたちの春休みに合わせて初めて開いた。
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