「おいでや」で戦後30年間に諏訪地方で作られた機械式腕時計の変遷をたどる展示を企画した岡谷哲男さん
戦後から1970年代にかけて長野県諏訪地方で発展した機械式腕時計の製造の歴史をたどる企画展「時計の昭和」が下諏訪町の観光施設「しもすわ今昔館おいでや」2階展示スペースで開かれている。デジタル化やIT化が加速する現代に対し、多くの人が協力して製品を作り上げていた戦後30年間の諏訪のものづくりの歴史を見詰め直す。写真パネルや当時発売された機械式腕時計など約50点を展示。3月26日まで。
展示は、元セイコーエプソン社員で時計のデザインを担当していた岡谷哲男さん(71)=諏訪市=が企画した。現在は自身のデザインスタジオを経営し、オリジナル時計のデザインなどをしている。おいでや共催。▽躍進する時計作り「東洋のスイス」▽最大のヒット作「ファイブシリーズ」▽最高の普通「グランドセイコー」-の3章で構成した。
パネルでは、1942年、セイコーエプソン(諏訪市)の前身である大和工業が誕生し、59年には大和工業と第二精工舎諏訪工 場が合併して諏訪精工舎が 発足した経過などを写真とともに紹介。業界初のベルト コンベヤーシステムによる 時計製造の様子や当時の新 聞の求人広告などもある。時計産業は50年代に飛躍的な成長を遂げ、諏訪は名実ともに「東洋のスイス」として認められていった。
63年に登場した最大のヒット作「ファイブシリーズ」では若者の”憧れの的”だった歴代シリーズを並べた。名前の由来となった五つの機能として、▽高性能自動巻▽防水10メートル▽曜と日の一体窓表示-などを紹介。シリーズの広告が掲載されたスポーツ雑誌や若者向け雑誌なども展示した。
セイコーの「実用腕時計の最高峰」として61年から発売された「グランドセイコー」の変遷を実物とともに紹介。70年代に三協精機製作所(現日本電産サンキョー)で商品化されたドラム式デジタル時計も並べた。
岡谷さんは「戦後30年は人の手でものづくりをした『いい時代』だった」と振り返り、「長く使える、見るべき機械式時計をしっかりと伝えていきたい。諏訪の原点を見直すことで新しいものづくりの発想につながれば」と話していた。
期間中無休。問い合わせはおいでや(電話0266・27・1800)へ。
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