諏訪大社の神職の先導で諏訪大社下社秋宮の境内に入る僧侶ら
江戸時代まで諏訪神社(現諏訪大社)とともにあった神宮寺由来の仏像などを一斉公開する「諏訪神仏プロジェクト」の終了を諏訪大社の神前に奉告する「奉告祭」が28日、長野県下諏訪町の諏訪大社下社秋宮で行われた。プロジェクトの関係者や一般の参拝客が見守る中、神宮寺の仏像を大切に守ってきた寺院の僧侶ら35人が境内に入り、仏事を奉納した。
同プロジェクトは10月1日から11月27日まで、約2カ月にわたって諏訪地域の25寺社と2博物館で仏像などを公開したほか、各寺社や関係団体が関連企画を実施。地元をはじめ全国から参拝客が訪れ、神と仏が共存していたかつての姿を振り返った。
行列を組んで大社通りを歩いて秋宮の鳥居前に到着した僧侶らは、境内に入る前に「庭儀」を行ってから神職の先導で歩を進めた。神職と僧侶らが向かい合い「対揖」を執り行ってから、幣拝殿へ。それぞれ左右の片拝殿に着座して奉告祭に臨み、神職による祝詞奏上や、僧侶らの大般若経の神前読経などを行った。玉串の奉納の際は、神社での拝礼作法に倣い僧侶らも二礼二拍手一礼をする姿も見られた。
この日、境内には関係者や来賓のほか、一般の参拝者も多く訪れ、神前での仏事に臨んだ僧侶らを静かに見守った。今井美恵さん(51)=岡谷市今井=は「たくさんお坊さんが集まり、神社でお経を唱える姿に神聖な気持ちになったし、今の時代だからこそ大切なことのように思えた」と話していた。
同プロジェクト企画部次長の照光寺(岡谷市本町)僧侶、宮坂宥憲さん(37)は「神社に迎えていただき、また、多くの参拝者の方々と一緒に祈りをささげることができ感無量」とし、「神職の方々とコミュニケーションを取りながら一つの神事をつくり上げることができたのは良い経験となった」と語った。
同プロジェクトの原直正会長(75)=諏訪市中洲=は、諏訪大社や寺院などの関係者の協力に感謝した上で「寺社巡りをする人たちの姿を見て、改めて長い歴史に培われた信仰の重みを学んだ。これを機にお寺やお宮を身近に感じてもらえたらうれしい」と期待を寄せた。
また、期間中に講演を行った名古屋市立大学の吉田一彦特任教授(日本仏教史)も「神仏融合の姿を再現できたのは、日本の伝統的な宗教観念を見直す上でも大事なことだと思う。これをスタートとし、今後も開催して全国や世界の注目を集めてほしい」と述べた。
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