プロジェクトメンバーの手ほどきを受けながら、ワサビ田を整備する公民館講座の参加者=9日午前、南箕輪村神子柴
長野県南箕輪村の住民有志が、休耕していた同村神子柴のワサビ田を復活させるプロジェクトを進めている。今年度は村公民館の講座とタイアップし、より多くの住民の参加も得て活動を本格化。高齢化や効率化などで担い手が減少する村の伝統的な農産物のワサビに改めて光を当て、ふるさとへの愛着を深めながら地域の活性化につなげる。
信州大学名誉教授で村文化財専門委員の井上直人さん(69)=同村沢尻=が発起人となり、湧水が豊富な場所にある約8アールのワサビ田を再興しようと昨年11月から整備を開始。週に1度集まって作業を重ね、仲間も徐々に増えて13人になった。
井上さんによると、村のワサビ栽培は経ケ岳の扇状地にあり湧水が得られることから盛んになったという。江戸時代に伝わり、大正時代には副業としての特産物振興が進み、10軒を超える農家があったと昭和初期の文献には残されている。
村産業課によると、現在村内でワサビを栽培するのは兼業などで数軒残るのみ。井上さんは「風土にあった農業は無形の文化財。村ならではの自然と一体となったこのワサビ栽培を受け継いでいきたい」と、賛同する仲間と共に伝承に向けて汗を流す。
9日には公民館講座の初回が行われた。応募した7人が参加し、絶え間ない湧水で潤う砂利敷きの田で作業。プロジェクトのメンバーから手ほどきを受けて、苗を植えるための畝を水面より20センチ高く整え、成長を促すため水の通りもよくした。
熱心に取り組んでいた伊藤望さん(29)=神子柴=は「ワサビに関われるのは貴重な体験だと思う。地元の水のきれいさもとても新鮮。ワサビを使った料理にも挑戦してみたい」と目を輝かせた。
これまでに育った苗の成長は順調で、秋には収穫を予定。井上さんは「ワサビを使った新商品や新しい栽培方法なども考えていきたい」と夢を膨らませている。
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