製材所に残る木材で焼いたパン
特集は姉妹が営む山あいのパン店です。思い出の実家を改装、亡き父が営んでいた製材所に残る木材を利用し、石窯で自慢のパンを焼いています。目指しているのは、人と人がつながる温かみのある場所です。
焼きたてのパンの香りが漂います。こちらは長野県松本市奈川のパン店、その名も「製材所のパン屋」です。
妹・圭子さん(左)と姉・亜紀子さん(右)
営むのは、向井亜紀子さん(53)と圭子さん(52)の姉妹。かつて製材所を営んでいた実家にオープンさせました。製材されずに残った木材をまきにして、石窯でパンを焼いています。
姉・向井亜紀子さん:
「パン屋になる形で、そういう時期がきたから良かったと思う」
今は別のところに住む2人。「父の面影」を感じながら店を営んでいます。
製材所のパン屋
林業が盛んだった山あいの奈川。姉妹の父・清さんは製材所を営み、3人の娘を育て上げました。規模が小さく経営は厳しさを増していきました。
姉・向井亜紀子さん:
「いつかはここをどうにかしなくてはと、父も感じてた」
父・清さん(提供写真)
亜紀子さんは短大を卒業後、製材所を手伝う一方、不動産業や建設業を始めました。製材の仕事が減っていく中、清さんは8年前に他界。3年後、亜紀子さんは製材所を閉めました。
姉・向井亜紀子さん:
「(家族で)相談してやめざるを得ないねって形でやめた。やめたけどいつかは父が納得する=私が納得する形で、製材所のけじめをつけたいと思ってたから」
父も、自分も納得できるけじめ。それが、2020年の夏に思い付いたパン店でした。
姉・向井亜紀子さん:
「コロナ禍で自由にお買い物すら行けない、そんな時にすぐ近くにある安心安全な食べ物、おいしい食べ物ってなんて大事だろうと思ってた。製材所をやめてしまったけど、その材料をどうしようか、ごみとして処分するとものすごい費用がかかるし、大事に製材所を営んできた父に対し悲しい話だと思った。あ、この材木を燃料としてパン焼けるぞと」
かつての製材所 木材はパンを焼く燃料に
亜紀子さんは実家をリノベーションして1年後、パン店をオープンさせました。「相棒」として誘ったのは菓子店などで働き、調理師の資格を持つ妹の圭子さんです。
妹・圭子さん:
「最初はそんなの無理でしょって、この山奥でパン屋やっても来る人なんていないとか。お店ができて中ができあがっていくうちに、一緒に2人ならできるかなって、そう感じて今になる」
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