下諏訪町萩倉に建てた醸造工場でクラフトビール造りを始めた田村治男さん
長野県下諏訪町萩倉で、かつて同町の酒造会社で蔵人として働いていた田村治男さん(35)=同町東町上=がクラフトビールの醸造を始めた。同地に建てた醸造工場で4月から仕込んできたクラフトビールを5月上旬に初出荷。「萩倉の水にこだわって造った。口なじみがいいビールができたと思う」と手応えを語った。
栃木県出身。30歳頃まで東京でカメラマンをしていたが転職を決意。日本酒が好きだったことから酒造りに憧れ、従業員を募集していた下諏訪町の酒造会社に就職した。同社で2年間、先輩の職人から酒造りの工程を一から学んだが同社が廃業に。せっかく学んだ知識を生かそうと、将来的には自ら会社をつくることを決心。日本酒製造にはさまざまなハードルがあったため当時人気が出ていたクラフトビールに着目し、山梨県のビール醸造会社で2年間、ビール造りを学んだ。
2020年7月に同社を退職し、田村醸造合同会社を立ち上げた。「コロナ禍だったがやってみようと動いた。でも、コロナがこんなに長引くとは思っていなかった」と当時を振り返る。同町に住んでいた縁もあり、萩倉に工場を建てることに決めた。萩倉で酒米を作ったり、東俣川の水をくんだりしていたといい「水がおいしいのが決め手。景色がいいし、近くに温泉もある」と同地の魅力を語る。
工場は昨年11月に着工し、今年1月に完成。発酵タンク6基を備え、仕込みから醸造、瓶詰めまでを1人で行う。「ムギクラブルーイング」のブランド名は萩倉や蔵人、萩倉にかつて多くあった繭蔵などへの思いを込めた。
「地元の人に受け入れやすい味にしたいが、地域性も出したい」と田村さん。いずれは、ビールの香りを決めるというホップを工場近くの土地で栽培したい考え。「どんなフレーバーや喉越しがいいのか、町の人の感想を聞きながら味を探っていきたい。諏訪地方のホテルや飲食店とも連携し、地域を盛り上げていきたい」と意気込んでいる。
クラフトビールは6種類で、諏訪地方の酒販店で販売中。このうち3種類は他企業との「コラボビール」で、ドイツ系やベルギー系の味という。5月末まで同社の「インスタグラム」でクラウドファンディングも受け付けている。
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