信濃路うさぎやの「くるみそば」
名菓の復活です。長野県上田市で70年近く続いた菓子店が2021年7月に新型コロナウイルスなどの影響で閉店し、名物の菓子も姿を消しました。しかし、2022年2月に復活。救ったのは、ファンの一人だった農業関係の会社を営む男性でした。
上田城跡公園の「桜まつり」
上田市の桜の名所・上田城跡公園。今年の「桜まつり」は、新型コロナの影響で見送られてきた「物販」も感染対策をした上で2年ぶりに行われました。
その中には、上田の名菓も…
信濃路うさぎやの「くるみそば」
信濃路うさぎやの「くるみそば」。あんこをそば粉の皮で包み、上にクルミをまぶしてあります。土産の品として上田市民には定番の和菓子です。
購入した人:
「みんな大好きで、おみやげにはいつも必ず買っていたお菓子だったので」
「家族におみやげで買いました。クルミの味がおいしくて、あんも普通のあんと違うので」
今、売られているのは復活した「くるみそば」です。
実は、元々の「信濃路うさぎや」は2021年7月に閉店しているのです。
店は昭和27年(1952年)の創業。菓子やパンを販売し、市民に愛されてきました。
しかし、建物の老朽化や新型コロナの影響などが重なり、経営者はおよそ70年の歴史に幕を下ろすことにしたのです。
当時、SNSでは…
(SNSのコメント)
「小さい頃から慣れ親しんだものがなくなってしまう悲しみ。ずっと忘れない、うさぎやのくるみそば」
「ちょっとしたおみやげに最適だったのに、包装紙もすてきだったのに」
閉店を惜しむ声。そこにうれしい知らせがありました。今年2月、「信濃路うさぎや」は市内の別の場所で復活を果たしたのです。
復活させた永山一男さん(62)。農産物の生産・加工販売を行う「ずくだせ農場」の代表です。
これまで地元の大豆を加工販売したり、次世代の農業を担う若手をバックアップしたりと、農業の振興に携わってきました。その永山さんがなぜ、「畑違い」の店の復活と菓子作りに挑んだのでしょうか。
信濃路うさぎや・永山一男会長:
「お菓子の域を脱して『一つの文化』になっているだろうと。上田市の人たちは『くるみそば』を上田の誇りと考え、他人にプレゼントしているのでは。これがなくなるのは寂しいなと思って、私がうさぎやのくるみそばを継承していこうと決めました」
永山さんも「くるみそば」のファン。前の経営者から屋号と事業を受け継ぎ、新たな挑戦を始めました。
信濃路うさぎや・永山一男会長:
「私は業界違いで和菓子作りはやったことがなかったので、一番大変だと感じたのは建物をつくったり、製造ラインをつくったり、雇用したりすることより、創業者の思い、社員の思い、お客さまの思いを全部引き継がないと。そこに一番のプレッシャーを感じて、そんな簡単にやろうと言ってよかったのか、私の力でできるのかと不安に感じました」
前の経営者の思いも受け継ぎ、あの味を守りたい―。
そう願う永山さんのもとに頼もしい仲間が集まりました。「くるみそば」を作っているのは、以前の「うさぎや」で働いていた職人たち。一度は別の店で働いていましたが、復活を聞き、新生「うさぎや」に集まったのです。
職人・川崎浩平さん:
「うれしかったですね。またくるみそばが作れると思って。歴史あるお菓子なので、その歴史を受け継ぎつつ、味もよりいいものに、おいしいものにしていきたい」
製法は以前のまま。レーンも前のうさぎやから受け継ぎました。自慢は、4、5時間かけて煮たあんこ。そのあんこを石臼挽きした、県産のそば粉の皮で包みます。クルミもたっぷりと。形を整え、オーブンで焼いたら、完成です。包み紙も以前のまま…
(上田市出身・小宮山アナウンサー)
「クルミのザクザク感がたまりません。あんこもいっぱい入っているんですが、甘さ控えめなので、ぺろっと食べられちゃいます。小さい頃から慣れ親しんだ味なので、久しぶりに食べられてとてもうれしいです」
訪れた客は…
客:
「(復活を)待っていたので、息子が県外にいるので、おみやげに。きょう宅配便で送ります。(息子さんも「くるみそば」好き?)はい、好きです、ここの生まれですから。私も小さい頃食べたのですが、やっぱり懐かしい味です」
「上田の名菓の一つなので、盛り上げていってほしい」
店と看板商品の復活に、前の経営者は「任せることがきてよかった」と喜んでいるということです。
永山さんはくるみそばだけでなく、以前、売られていた他の菓子も順次、復活させたいとしています。
信濃路うさぎや・永山一男会長:
「一番は人に愛される、食べておいしい、食べて笑顔になる。そこに元気が出てくれたらなおさらいい。70年、100年と続けていくには、どうしたらいいかを大きなテーマにしています」[/MARKOVE]