打ち上げが成功し、湖上から回収した6号機を報道に公開するプロジェクトメンバー=岡谷市のテクノプラザおかや
長野県諏訪地方の自治体などが連携して取り組む「モノづくり集積地SUWAのヒトづくりプロジェクト」は20日、諏訪湖で小型ロケットの6号機を打ち上げた。諏訪湖を発射場所として低高度の打ち上げを想定した場合の「完成形」を目指し作った新機体の打ち上げに成功。初搭載した模擬人工衛星の機体からの放出、落下後の回収にも成功した。
諏訪地方のものづくり技術の周知と人材育成を図る取り組み。諏訪湖での打ち上げは2020年に初めて行い、新型コロナによる21年の中止を経て今回が2回目。機体には入手、加工がしやすいガラス繊維強化プラスチックを多く使った。全長205センチ、直径10.2センチで、5号機を同じハイブリッドエンジンを採用。先端を鋭い円錐状に作り、空気抵抗を小さくした。
プロジェクトメンバーら約30人が参加し、午前6時から現地で作業。準備が進む中、家族連れら観客が湖畔沿いに集まり、ロケットを捉えようとスマートフォンなどを湖に向け、その瞬間を待った。午前9時37分、予定通りの時刻に発射することが告げられ、現場に緊張感が漂い始めた。
午前10時、点火。「上がったっ。上がったっ」。機体をその目に捉えた観客が興奮した様子で声を上げ、ごう音が響いた。機体は岡谷湖畔公園から約700メートル沖の台船上の発射台から発射し、約9秒で最高高度約325メートルに到達。パラシュートが開き、発射台から約216メートルの地点に着水した。発射から着水まで約27秒。模擬衛星も上空で機体から放出され、湖に着水した。
最高高度は前回と同程度だったが、最高速度は発射から1.5秒で時速360キロに達し「前回よりかなり速く上がった」。プロジェクトマネジャーの中山昇・信州大工学部准教授(51)は「数年前からマッハ越えを目標に取り組んでいる」とし、来年度以降の取り組みに意欲を見せた。
プロジェクトには地元製造業を支える技術者たちが携わる。小学2年の児童(8)は家族と一緒に湖畔から打ち上げを見守り、速さや音に驚いた様子。プロジェクトに参加する自らの父親に向けて「頑張ってるなって(思った)」と言葉を寄せた。
プロジェクトリーダーの高木大和さん(42)=丸眞製作所=は「ロケットを作り、打ち上げる技術が身近にあることは地域貢献になっていると感じる」と話した。
[/MARKOVE]