白鳥孝市長らに実験結果を報告する信大農学部の関係者=伊那市役所
長野県伊那市とIoT(モノのインターネット)技術を活用した農業分野の省力化に取り組む、信州大学農学部の渡邉修准教授と学生らが16日、市役所を訪れ、これまでの研究成果を白鳥孝市長に報告した。農作物を食い荒らす有害鳥獣の捕獲を知らせるセンサーと、ドローンを使って国の水田転作交付金算定に必要な農地確認を行う研究。渡邉准教授は「どちらも大幅な作業の効率化、省力化がみられた」と実績を強調した。
獣がわなに掛かるとメールでスマートフォンに知らせる「鳥獣わなセンサー」は2017年、猟友会員がわなを見回る手間を省く目的で、市と信大、市有線放送農協が開発に着手。19年に実用化した。
この日は、信大農学部4年の榊原広大さん(23)がセンサーの有無により作業効率を比較する実験の結果を報告。「センサーで獣がわなに掛かった時だけ現場へ行くと、センサーを使わずに毎日見回りするよりも時間と経費は7割の削減になった」と述べた。
一方、農地確認作業は、同学部研究専属職員の加藤航太さん(26)が、ドローンを使った空撮と画像分析による農地面積の換算や作付け作物の判別について説明。「空撮による農地確認は、煩雑な事前準備が不要」とし、「同様のシステムを導入した他の自治体では従来比7割の省力化に成功している」と発表した。
渡邉准教授は空撮による分析の課題を「水稲や小麦、大豆、ソバ、牧草を除く野菜などの判別は、今後精度を高める必要がある」と指摘した。
白鳥市長は「研究は災害対策などでも、幅広い用途や応用が考えられる。新ビジネスとして発展させてほしい」と述べた。
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