作業する利用者たち
障がいのある人にとってより良い働き方を提案、提供しようと、株式会社ぞうさん(本社・長野県原村)が3月に新たに開所した多機能型事業所「働くぞうさん茅野」(茅野市ちの)は「同一労働同一賃金」を実践している。就労継続支援A型事業所とB型事業所の二つのサービスを展開しており、どちらの利用者であっても同じ仕事を行えば同じ賃金を支払う。「全国的にみても珍しい取り組みで、県内でもほぼ例がないのでは」(同社)という。利用者のモチベーションを維持し、働きがいのある事業所を目指している。
就労継続支援事業所は、通常の就労が困難な障がい者を対象に働く場を提供している。A型事業所は雇用契約を結んでおり原則最低賃金が適用されるが、B型事業所は雇用契約を結ばず、賃金ではなく工賃として生産物に対する報酬が支払われる。同社代表取締役会長の原田健さんは、同じ仕事をしたとしても賃金が異なることに疑問を感じ、県に働き掛けをして同一労働同一賃金での運営にこぎ着けた。
同社はすでに富士見町でA型事業所「働くぞうさん富士見」を運営しているが、「働くぞうさん茅野」は新たに3月に開所。1階に「ベーカリー・カフェぞうさん」を構える新社屋(茅野市ちの)の3階に作業所をオープン。A型の利用者は1日6時間、週5日働き、B型の利用者は本人の希望に合わせて勤務日数や時間を選んで働いている。
仕事内容はベーカリーカフェでの製造・販売、生麺の製造・包装、自社製造クッキーの袋詰め、パソコンの事務作業、精密部品の組み立てなどで、本人の適性に応じて選択していく。どちらの利用者でも同じ職場で働く可能性があり、A型からB型またはB型からA型への移行も可能。A型の利用者が同社の正規雇用に移行した例もあるという。
B型の利用者の時給は本人の適性に応じて従事する作業内容によって決まる。県の最低賃金の時給877円を得ることもできるといい、利用者のモチベーション維持や向上を後押しする。原田さんは「利用者が楽しめる仕事づくりを意識している」とし、働く選択肢が増えることを期待。「まずは多くの方にこの仕組みについて知ってほしい」と呼び掛けている。
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