相撲甚句の終盤、静寂に包まれた斎庭で勇壮な「胸たたき」を披露する青年力士(踊り子)たち
県指定無形民俗文化財の諏訪大社上社十五夜祭奉納相撲は15日、諏訪市の上社本宮の斎庭で行われた。化粧まわしを身に着けた同市中洲神宮寺の青年力士11人が輪になり、古式ゆかしい相撲甚句を奉納。全国で唯一継承されているといわれる「胸たたき」を披露した。
「胸たたき」は相撲の基本である守りと攻めを表現している。境内に響き渡る相撲甚句が終盤を迎えたころ、力士たちが輪の内側に大きく踏み出して両手で自らの胸を強くたたいた。十五夜祭奉納相撲神宮寺保存会や諏訪大社大総代、力士の家族や参拝者が息をのんで見入る静寂に包まれた境内に独特の節回しと胸を打つ音が響き渡り、神聖な雰囲気を漂わせていた。
1356(延文元年)年に成立した諏訪神社最古の縁起書「諏訪大明神画詞」では、祭事の終わりに神事相撲を奉納していたとする記述がある。十五夜相撲は神宮寺の若者たちが辻で相撲を取っていたのが始まりとされ、確かな記録に限ってもその歴史は江戸時代の1817(文化14)年までさかのぼる。
今年の大関、金子仁志さん(38)は8月30日から始まった全体練習などで22歳から41歳までの力士をまとめ上げてきた。この日の奉納を終え、「多くの皆さんの支えがあって無事に奉納させていただけた。ともに練習してきた踊り子(青年力士)たちの心が一つになったいい奉納ができたと思う」と緊張感に満ちた表情をほころばせた。練習を見守ってきた同保存会の五味寛雄会長(53)は「練習期間中に大雨に伴う災害が起きるなど大変な状況の中で地域を守る消防団活動と並行し、練習にも励んだ。きょうは120%の出来。伝統を無事に継承してもらった。感動した」と力士たちをたたえていた。
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