赤岳鉱泉に開設した山岳診療所で打ち合わせを行う運営委員
八ケ岳連峰の赤岳鉱泉(標高2220メートル)に3日、八ケ岳初となる山岳診療所が開設した。土日や祝日、大型連休など通年で開き、日本登山医学会の認定を受けた山岳医と山岳看護師がボランティアで体調不良者や傷病者のファーストエイド(救急初期対応)、下山前のサポートなどを行う。
赤岳鉱泉主人の柳沢太貴さん(33)によると、八ケ岳ではこれまで診療所が無く、年間を通じて訪れる登山者や山小屋スタッフが万が一の際に頼ることができる診療所の必要性を強く感じていたという。同山荘では3年前から、夏季と冬季に山岳医と山岳看護師が滞在して体調不良者などの対応に当たる活動を開始。新型コロナウイルスによる休業明けの昨年8月からは通年で取り組み始め、本格的な夏山シーズンを迎える3日に診療所を開設した。
診療所は、登山客や救助関係者、宿泊客らが利用しやすいよう同山荘の入り口付近にあった宿泊者用の炊事場の一部を改装して設けた。診療所内にはベッドやAED(自動体外式除細動器)を置き、熱中症や低体温症、ケガの手当てなどふもとでの治療につなげる処置を行う。治療や投薬などの医療行為は行わない。
運営は、山岳医や山岳看護師らでつくる運営委員会が、山岳保険を扱う「やまきふ共済会」からの寄付を受けて活動する。諏訪地区山岳遭難防止対策協会が後援。運営委員長は、南アルプスの甲斐駒ケ岳で山岳医療パトロールなどに取り組んできた山岳医の師田信人さん(67)、副委員長を柳沢さんと国際山岳看護師の小林美智子さん(50)が務める。これからの夏山シーズンは、山岳医と山岳看護師ら約20人が交代で対応する。
師田さんは「山岳医と山岳看護師が活動する前例のない試み。安全登山をつくる一つのモデルケースとなるよう取り組んでいきたい」と述べた。柳沢さんは「関係者の皆さんの協力があり、ようやく実現した。登山者のための安全登山活動に引き続き取り組んでいきたい」と語った。
山岳診療所は土曜日正午~日曜日午後1時まで。開設期間は7~10月、12~3月の週末や祝日、年末年始、大型連休など。利用は無料。
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