自転車に舞台を積んだ昔ながらのスタイルで、乙事区にまつわる紙芝居を披露する築館千枝さん。子どもを含め幅広い世代が見入った
長野県富士見町乙事区は12日、今年度進めた乙事学プロジェクトの成果を発表するフォーラムを区公民館で開いた。文献収集や聞き取り・現地調査を経て作成した「乙事図鑑」や史跡マップを発表し、昭和初期の実話に基づいて作った紙芝居を、自転車に舞台を積んだ昔ながらのスタイルで初上演。歴史ある集落の「宝」を発信し、維持・活用や次世代につなげる機運を高めた。区内外の約80人が聴講した。
マップには区内に点在する文化財と位置を収録する。区発祥の地とも言われる「綿の芝湧水」や、山岳信仰の史跡群、諏訪の地で唯一行われていた「乙事の馬市」、江戸時代に造られたオオカミの落とし穴「狼落とし」などの”区宝”を取り上げ、プロジェクト推進委は「戦国時代、乙事は有数の要所だった」「山岳信仰が集落の団結力につながった」と力説。マップは新たに作成した区ホームページからも入手でき、幅広い世代に史跡巡りを呼び掛けた。
紙芝居はメンバーの築館千枝さんが担当。自転車でさっそうと登場し、本郷小に通う子たちのために村を挙げて10年がかりで造った「中丸沢の学校道」を題材にしたおはなしを上演した。方言や実際の道づくりの写真を織り交ぜながら自作の絵をめくり、集落の絆や温かさが詰まった物語を情感たっぷりに届けた。
御柱祭を契機にしたプロジェクトで、県の地域発元気づくり支援金を活用して一連の活動を進めた。フォーラムでは水をめぐる歴史や、木造建築の伝統技術「貫構法」と乙事諏訪社御柱祭での活用についての話もあった。五味俊区長は「住みたい、住み続けたい乙事区を感じていただけたら」と望んでいた。
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