売りに出されている井出野屋旅館 佐久市
映画「犬神家の一族」(1976)の撮影で使われた長野県佐久市の老舗旅館が、経営難のため売りに出されています。映画ファンなどから「建物を残したい」と既に問い合わせが相次いでいるそうです。
佐久市の旧中山道・望月宿にある「井出野屋旅館」。大正時代の面影を残す木造の宿です。
■撮影に使われた部屋は当時のまま
撮影が行われた部屋
(記者リポート)
「実はこの場所、ある有名映画の序盤の大事なシーンで使われた旅館なんです」
市川崑監督がメガホンをとった映画「犬神家の一族」(1976)。主人公・金田一耕助役の石坂浩二さんや、女中役の坂口良子さんの登場シーンの舞台となったのがこの旅館です。
4代目の井出忠昭さんと勝子さん夫婦
撮影に使われた部屋やげた箱は今もそのまま。主人公が悲鳴を聞きつけ、洗面所の前で遺体を見つける階段からの「動線」もそのままです。
建物は大正13(1924)年の建築。当初は料亭でしたが戦後、旅館になりました。
4代目の井出忠昭さんと妻・勝子さん。撮影場所に選ばれたエピソードを話してくれました。
■ロケの決め手は「玄関開けてすぐに玄関」
玄関入ってすぐにある階段
井出野屋旅館・井出忠昭さん:
「玄関開けてすぐに階段がある。それが条件だったらしい。監督さんが直々に見えて決めてもらった。ちょっとたまげた。たまげた半分うれしかった」
館内には、当時のサインが大切に飾られています。
井出勝子さん:
「ちらちらと見ましたけど、きれいでしたもんね。若くていい時でしたから、坂口良子さんは」
館内に飾られているサイン色紙
井出忠昭さん:
「(石坂さんに)何かの時に『大変ですね』と言ったら『慣れてますから』と言っていた。しゃべれるほどではない、こっちが緊張しちゃうから」
その後、旅館は1995年公開の映画「君を忘れない」の撮影でも使われ、水野真紀さんや反町隆史さんが訪れました。
井出忠昭さん:
「映画を見て来られるお客さんが多い。好きな人は北は北海道、南は沖縄から見に来る」
■経営難で売りに…映画ファンなどから問い合わせ続々
ミヤモリ不動産のホームページより
しかし…
(記者リポート)
「多くの映画ファンに愛されてきたこちらの旅館ですがこの度、売りに出されることが決まりました」
コロナ禍による業績悪化に加え、2人とも腰を痛め営業の継続は難しいと判断。不動産会社と話し合い、土地と建物あわせて1880万円で売却することになりました。
井出忠昭さん:
「寂しい反面はありますね、もう81年いますからね。ご先祖さまに申し訳ないかなと」
不動産会社には映画ファンなどから「建物を残したい」とすでに30件以上の問い合わせがあるということです。2人は買い手が見つかるまでは営業を続けることにしています。
NBS長野放送
井出勝子さん:
「思い残すことがないように、頑張ってやっていきたい」
井出忠昭さん:
「できれば残してやってもらえればいいかなと」
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