寺社建築の技を持つ大工を育てたいと、冊子を作った小松さん
安土桃山時代から続く伝統建築・諏訪匠大隅流の宮大工棟梁、小松金治さん(85)=長野県諏訪市四賀普門寺、富士小松工務店社長=は、大工職人としての自身の歩みと実績をまとめた冊子を製作、刊行した。木を刻んで組み建てる腕のある大工が少なくなる中、「寺社建築の技術を持った若い大工を育てるために五重塔を建立する」のが小松さんの目標。冊子は、その一世一代の悲願実現に向けて地域の人たちに賛同を得るための”経歴書”という。
小松さんは15歳の時、親類、家族の勧めで地元の大隅流石田房志氏に弟子入りを請い、中学卒業と同時に入門。諏訪大隅流の中でも名工とうたわれた江戸時代の大工、柴宮長左衛門矩重の技を受け継ぎ、諏訪大社下社春宮、秋宮御宝殿の新築をはじめ、県内外の神社仏閣で建築や改修、彫刻を手掛けてきた。2006年には県卓越技能者(信州の名工)の表彰も受けた。
冊子はA4判、82ページ。写真と新聞記事のスクラップ、工事経歴の表などで足跡をたどった。神社仏閣の建物や彫刻の写真は、じっこんの仲のカメラマン、三井三男さん(84)=同市四賀桑原=が各地を巡って撮影した。
小松さんは「大工の腕を磨くには経験しかない」として、次代の大工を一人でも多く育てるために明治元年の神仏分離令で取り壊された諏訪大社上社神宮寺五重塔の復元建立を目標と定めている。実現に向け、長年掛けて建築用の木材を造り、私財を投じる志で賛同者を集め続けている。
冊子を通じて「やってきた仕事から自分の(大工の)腕と人間性を知ってもらい、五重塔建立の機運を高めたい」と小松さん。300部作り、地元の小学校にも贈って子どもたちに諏訪の伝統技術を伝える機会にもした。
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