貫構法で完成させた軽トラックの荷台に載る木やり台。9月の乙事諏訪社御柱祭で活用する
長野県富士見町の乙事区(三井一照区長)は9月の乙事諏訪社御柱祭で、木造建築の伝統技術「貫(ぬき)構法」で作った木やり台や木製桟敷を活用する。集落内には柱と柱の間に貫(水平材)を通し、くさびで締め固めた構造の民家が比較的多く現存し、「木」が主役の御柱祭を契機に伝統的な木組みの良さを再認識してもらおうと計画した。14日は曳行(えいこう)の際に木やり衆が乗る木やり台を完成させた。木製桟敷は来月17日に境内で組み立てる。
地域の歴史、文化、自然資産などを維持・活用し、次世代に伝承していく「乙事学プロジェクト」の一環。県の地域発元気づくり支援金事業に採択され、東洋大学の樋口貴彦助教=富士見町出身=が中心となる「貫構法研究会」などと連携して取り組む。
14日は研究会から職人や設計士ら8人が訪れ、乙事財産区有林から調達したサワラの木4本を垂直に組み上げ、あらかじめ開けておいた貫穴に材を差し込んだ。制作したのは、これまでありそうでなかった「木やり台」。軽トラックの荷台にちょうど納まるサイズとし、里曳(び)きでは、子どもを含めて代わる代わる台に上がって木やりを響かせる。
同研究会の大和田卓さん=東京・日建設計=は、増改築が容易であることを貫構法の魅力の一つに挙げ、今回の制作品も「簡単に解体、収納できる」と説明。「昔からの文化的構法で地震にも強い。乙事のような木が豊富な地域で見直され、御柱のように木の循環につながっていけば」と期待する。
区内の小学生約30人を集めてワークショップを行う予定だったが、新型コロナ対策で少人数制に切り替え、6人がのこぎりや突きノミなどを体験。御柱の木作りにも必要な技術で、本郷小6年の児童(12)は「次の次ぐらいの御柱でしっかり活躍できるようにしたい」。同2年の児童(8)は「台の上で木やりをするのが楽しみ」と笑顔を見せた。
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