曳行に必要とされる氏子が感染対策を取りながら集まり、これまでのような華やかで勇壮な御柱祭が行われた。ただ、曳行日程から遅れが目立ち、本宮四は日暮れとともに上社本宮境内に入った=4日午後6時58分、本宮の階橋通過後
長野県諏訪地域の諏訪大社御柱祭上社里曳きは3~5の3日間行われ、本宮(諏訪市)、前宮(茅野市)の社殿の四隅に計8本の御柱をそれぞれ曳き建てた。コロナ禍で観光客の観覧自粛を求めたこともあり、人出は前回を大きく下回る見通しだが、天候に恵まれ、氏子は曳行に必要な人数が集まった。ただ、曳行時間は計画よりも遅れ気味で推移することが多く、2日目の曳き着けを断念せざるを得ない地区が出るなど円滑な曳行には課題も残った。
諏訪地方観光連盟御柱祭観光情報センターは期間中の人出について下社里曳き後にまとめて発表する方針だが、前回の御柱祭と比べれば大きく減少する。コロナ禍を受け、大総代組織が策定した御柱祭の実施に関するガイドラインで諏訪圏域外からの来訪者の観覧自粛を求め、周知が図られたことから沿道で見守る観光客は少なかった。沿道を埋め尽くすこれまでの御柱祭と比べると、人と人との距離は取りやすかった。
酒を飲みながら行き交う人の姿もほとんど見られなかった。御柱料理や酒類が振る舞われるお休みどころ「御宿」でも大人数での宴会のような雰囲気はなかった。
茅野署の諏訪大社上社御柱祭警備本部によると、近隣署員や県警本部などからの応援部隊を含め、延べ600人態勢で地元の消防団とともに警備に当たったが、目立った混乱はなかったという。規制や警備を巡って口論となるような報告もなかった。「酔っぱらった人がいなかったこともあり、規制の内容やこちらからの求めを冷静に受け入れてくれた」(同署)という。
曳行日程は今回、初日の曳行を本宮の御柱4本のみとした。前宮の4本の御柱屋敷(茅野市宮川安国寺)からの曳き出しを2日目に移したことで、早朝から前宮の御柱の曳行が開始でき、曳行日程に余裕を持たせることができた。だが、里曳き初日の3日は曳き出しが遅れ気味で推移し、 待機を余儀なくされた本宮四が御柱屋敷を出たのは予定時間から3時間以上遅れた午後1時ごろだった。仮に前回の日程だった場合、ここから前宮の4本を曳き出すとなると、前宮境内への曳き着けが大幅に遅れていた可能性がある。
本宮二、本宮四は2日目に曳き着けられず、3日目の早朝に動かした上での冠落し、建て御柱となった。いつもよりも氏子の人数が少なかった側面はあるが、円滑な曳行にはなお課題が残ったともいえる。諏訪大社上社大総代会でつくる上社御柱祭安全対策実行委員会は「遅れた原因について今後検証し、次回以降の御柱祭に生かしていく必要がある」と語った。
好天に恵まれ、特に4、5日は気温が上昇したこともあり、熱中症による救急搬送が2件あった。感染症対策でマスク着用が徹底されたことが一因とみる向きもあるが、暑さ対策は今後の課題の一つといえそうだ。長野地方気象台によると、5日の最高気温は25・5度で夏日となった。
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