茅野市宮川のイチカネト。節分を過ぎても朝の気温は氷点下8度。生天が凍り透明に輝く=2月4日
長野県諏訪地方の冬の寒さを利用した天然の角寒天の生産が、終盤を迎えている。この冬は安定した厳しい冷え込みと晴天に恵まれ、寒天工場が集まる茅野市宮川に事務所を置く県寒天水産加工業協同組合によると、「近年まれにみる”天屋日和”」。作業効率も上がり、品質も良好という。
角寒天は、海藻のテングサを大釜で煮て、ろ過、凝固、切断した生天を屋外に干す(天出し)。凍る、解けるの工程を繰り返し少しずつ水分が抜けて、2週間ほどで仕上がる。
今冬の天出しは例年並みの昨年12月上旬から中旬にかけて始まった。コロナ禍における需要低迷を見越して生産量の調整もあったが、思わぬ天屋日和に、多くの寒天工場が当初の目標より多く作ったという。
4日に最終の天出しを行ったマルゴ商店(宮川)の五味徳雄さんは「40年以上やってきたがこれほど寒天づくりに適した気候は初めて」と喜び、平年よりは少なめというものの、予定より10万本多い40万本を作った。
五味喜一商店(同)は11日まで天出しを行う。五味昌彦さんは「自然の恩恵で平年並みの100万本を作ることができる。釜をたく重油が昨冬より値上がりし痛手だったが、干し場の作業が効率よく進んだことで人員を最少に抑えられ大きな支出を避けられた」と話す。
五味嘉江(よしえ)組合長(同、イチカネト)は「寒すぎて凍った寒天がなかなか解けない苦労もあったが、ありがたい悩み」と笑い、「どの工場も生産が順調で品質の良い寒天が出来てよかった。組合のホームページで寒天レシピを載せているので大勢に食べてもらいたい」と話している。
同組合と茅野商工会議所では今年も寒天の日(2月16日)に合わせて、市内全ての保育園や幼稚園、小中学校に角寒天を無償提供し、寒天給食を通して子どもたちに郷土の味と伝統産業に親しんでもらう。生天無料配布などの寒天PRイベントは今年も中止するが、別の企画を計画しているので楽しみにしてもらいたいという。
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