わら細工が施された阿島傘を披露する渡部唯子さん(右)と水谷槙さん=26日午前、飯島町飯島陣屋
長野県飯島町の地域おこし協力隊員でわら細工の普及伝承に携わる渡部唯子さん(30)が、同じく下伊那郡喬木村で協力隊員として江戸時代から伝わる和傘「阿島傘」の技術継承に取り組む水谷槙さん(38)と組んで、しめ縄を骨組みに巻き付けたデザインの阿島傘を完成させた。県内各地でのものづくりに励む協力隊員がつながり、新たな価値観や在籍する自治体のPRなどにつなげようとコラボレーションしたもので、「この輪を広げていきたい」と意気込んでいる。
水谷さんの存在を知った渡部さんは3月末に喬木村に足を運び、早速共同制作しようと意気投合。4月から作業を開始し、交互に工程を重ねながら今月13日に完成させた。
傘に貼った和紙の縁にすき間を作り、わらをなって25メートルの長さにした縄を竹の骨組みに巻き付けたオリジナルのデザイン。縄作りだけでも40時間ほど要し、和傘作りも普段の数倍の労力を要した。
わらが水に弱いことから、当初は傘のどの部分にわらを使うか迷いもあったという渡部さん。しかし、水谷さんに出会った直後に町内本郷神社のしめ縄作りに招かれた際、「みご」と呼ばれる穂先に近い部分は漁業などにも使われて防水性が高いことを教えてもらい、解決した。
「実際にみごで縄をなうと強度もある。地元の人から偶然教えてもらったことで、その後の制作が進んだ」と渡部さん。水谷さんは2人で完成させた傘の出来栄えに「こんなにすてきになるとは思わなかった。二つの伝統工芸が持つ素朴で身近な温かさが、うまくかみ合った」と喜ぶ。
「これが町おこしの一つになり、さらに多くの協力隊員ともつながって新たな取り組みとして発展していけば」と2人。来月14日にはオンラインで県内隊員同士の交流会も企画して、参加を呼び掛けるなど準備を進めている。
完成した傘は、今春から渡部さんが制作拠点にする町歴史民俗資料館「飯島陣屋」に展示。現在コロナ対策のために陣屋は休館となっているが、再開後に多くの人に見てもらう考えだ。10月には喬木村での公開も計画している。
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