諏訪湖の今年の透明度の推移。信大諏訪臨湖実験所への取材を基に作成
諏訪湖の透明度が5月下旬ごろ急上昇していたことが、信州大学理学部付属諏訪臨湖実験所(諏訪市湖岸通り)の定期観測で分かった。5月25日の観測では透明度が3.7メートル程度となった。この時期に透明度が3.5メートルを超えるのは昨年に続き2回目とみられる。大型の動物プランクトン「カブトミジンコ」の増加が要因と考えられ、同所長の宮原裕一教授は「諏訪湖にとってのこの時期の新たな”当たり前”の始まりかもしれない」と注視している。
1977年から続いている定期観測によると、従来の5、6月の透明度は高くても2メートル程度だった。諏訪湖は植物プランクトンが減る冬に透明度が高まり、春にかけて植物プランクトンが増加すると、透明度が低下する。春から夏にかけての透明度の上昇は植物プランクトンを食す動物プランクトンの増加の影響だが、魚類が動物プランクトンを捕食するため透明度の上昇は一定の水準にとどまる。
従来の水準を超える透明度の高さについて、宮原教授は「動物プランクトンを食べる魚類が少なく、動物プランクトンが従来より減らなかった可能性がある」と指摘する。昨年も5月下旬から6月中旬に一時的に3.7メートル程度にまで急上昇した。
カブトミジンコは諏訪湖ではこれまであまり多くは見られなかったが、昨年に続き、今年も大量発生した。近年では2016年7月の魚類大量死の翌年に大量発生している。諏訪湖の主要な水産資源であるワカサギは今季、採卵事業が不調に終わり、放流卵数は従来よりも少なかったが、宮原教授は「ワカサギだけの問題ではなく、フナなどワカサギ以外の魚を含め、動物プランクトンを食べる魚が減っているのが影響しているのでは」とみている。
同実験所は昨年に続き、コロナ禍のため、例年行ってきた施設の一般公開を中止し、31日まで専用サイト(https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/science/inlandwater/2021/post.php)で公開。同サイトでも透明度の急上昇について言及している。
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