迫真の演技をする役者
長野県伊那市長谷に伝わる「中尾歌舞伎」の春季定期公演が29日、同地区の長谷伝統文化等保存伝習施設「中尾座」で開かれた。中尾歌舞伎保存会が主催しており、新型コロナウイルスの影響により実施は4年ぶり。演目は「人情噺 文七元結」で、親子の情愛や周囲の人たちの優しさを描いた物語だ。約200人が迫真の演技に見入り、盛んにおひねりを投げていた。
中尾歌舞伎は江戸時代までさかのぼる。太平洋戦争などの影響により風化したが復活し、同市の無形民俗文化財に指定されている。この日はパブリックビューイングを取り入れ、伊那公民館やモバイル公民館でも鑑賞できるようにした。
物語は、腕は立つが、ばくちと酒で身を持ち崩してしまった左官の長兵衛のため、娘のお久が借金を返済しようと奉公に出る。娘を思い真面目に働こうとする長兵衛だが、盗みの被害に遭った若者・文七にせっかく得た金を渡してしまうという粗筋。
4歳~60代の11人が出演。家を出た娘を両親が心配したり、文七が金を失って悲嘆したりと切ない場面がある一方、思わず笑ってしまう演出も随所にちりばめられ、観客を引き込んだ。
70代の女性は「(物語が)分かりやすい演目。演技は素晴らしく、人情とユーモアがあって良かった」と感想。同会の松田元伸副代表は「皆さん待ち望んでくれていたと実感できた。(役者は)出すべき成果をすべて出した」とし、今後も「期待に応えられるように精進していきたい」と話していた。
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