加藤登紀子さん
終戦後、日本人が旧満州から引き揚げる様子を描いた巨大な油絵の展示が長野県阿智村の満蒙開拓平和記念館で行われた。引き揚げを経験した歌手の加藤登紀子さんも訪れ、平和への祈りを込めた歌も披露した。
■なぜこんな悲惨な目に 中国人画家が描く
旧満州から引き揚げる様子を描いた「一九四六」
縦3メートル、横20メートル。巨大な油絵。
母親の遺髪を抱く子ども。口に手を当て泣いている女性。「一九四六」と名付けられたこの絵は終戦後、日本人が旧満州の葫蘆島から船で引き揚げる様子を描いている。
阿智村の満蒙開拓平和祈念館で展示された。
「一九四六」
作者・王希奇さん:
「生き延びるために、どんな苦労をして、どのように乗り超えて、なぜこんな悲惨な目にあったのか。芸術という手段で、この歴史を表現したいと思ったんです」
描いたのは中国人画家の王希奇さん。ネットで日本人孤児の写真を見たことをきっかけに2012年から制作を始め、およそ5年をかけ完成させた。
作者・王希奇さん
1932年から始まった「満蒙開拓」。多くの日本人が旧満州に移り、県内からは全国最多の3万3000人が送り込まれた。
しかし、終戦間際の1945年8月9日に旧ソ連が参戦し満州に侵攻。開拓団は逃避行を余儀なくされ、食糧不足や病気、集団自決などで多くの人が死亡したとされている。
引き揚げは1946年5月にアメリカなどの支援でようやく始まり、葫蘆島からは100万人余りが祖国を目指したとされている。
■加藤登紀子さん NO War!
加藤登紀子さん(左)と油絵を描いた王希奇さん(右)
歌手・加藤登紀子さん:
「『帰れる』って希望を感じた時に、連れて帰ってこられなかった子どもがいる人かなって思いますね」
歌手の加藤登紀子さん(79)。ハルビン生まれで2歳のときに葫蘆島からの引き揚げを経験した。王さんの絵が展示されると知り、先日、記念館を訪れた。
「一九四六」
歌手・加藤登紀子さん:
「あふれるほどの存在感で引き揚げた人たちの姿が描かれたものに出会って、本当に衝撃を受けましたね。リアルな出来事だったということを感じていただけたらと思います」
平和を願う加藤さん。現在、ウクライナではロシアによる侵攻が続いている。王さんの絵から着想を得て作ったという歌を披露した。
♪『果てなき大地の上に』
♪『果てなき大地の上に』
「何のために 誰のために 繰り返すのか 戦争を NO War! No! Forever」
全国最多の開拓団員を送り出した長野県。
記念館は平和を祈りながら見てほしいとしている。
※「一九四六」の展示は3月26日に終了
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