さまざまな竹が使われている旧料亭信濃の離れ「菊の間」
国の文化審議会は22日、長野県諏訪市大手にある旧料亭信濃の離れ「菊の間」と「桐の間」の2棟を、国の登録有形文化財(建造物)に登録するよう文部科学相に答申した。今後、答申通り告示される見通し。いずれも大正時代初期に建てられ、銘木や変形した竹をふんだんに使った数寄屋造りの高い建築技術が評価された。
「菊の間」と「桐の間」は、かつて諏訪の花柳界の中心となった街の一角にある。信濃は1909(明治42)年に創業し、本館、母屋、離れ4棟があった。77年に廃業となり、建物や庭を一部縮小。今回登録される2棟は、大工30人が3年かけて建築したとされる木造瓦ぶき平屋建てで、ほぼ当時のまま現存する。
初代当主の小池熊右衛門は、岡谷市で日本の製糸業をけん引した片倉組(現片倉工業)の出身。片倉の得意客をもてなす場として建てたとされ、地域を代表する料亭となった。
離れ2棟は、さまざまな品種や形状の竹、銘木を散りばめているのが特徴。天井、床、窓、書院の細部まで技巧が凝らされ、障子や欄間の組子細工が美しい。菊の間には竹の節や曲がりを生かした装飾を施し、桐の間は富士山や火灯をモチーフにした窓を備えるなど、格調高い造りとなっている。
料亭の3代目女将を務めた所有者の小池志保子さん(89)によると、画家の竹久夢二や東郷青児、作家の三島由紀夫など多くの著名人が訪れた。2棟は現在、作品展や茶会などの催事に使われている。
小池さんと長女の小松まやさん(61)=同市小和田南=は、桂離宮(京都市)の改修を手掛けた建築家の故安井清さんも訪れて高く評価したとし、「歴史ある建造物を地域の財産として次世代へつなぐ責任がある。保存、活用の在り方を模索していきたい」と話す。
県内の登録有形文化財は今回を含めて613件。市内では2014年に登録された諏訪市文化センターに続き、10件目と11件目となる。
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