解氷面の状況を確認する宮坂宮司。水面には周囲の山々の稜線が映り込んでいた=28日午前7時17分
長野県の諏訪湖の御神渡り(御渡り)の判定と神事をつかさどる八剱神社(諏訪市小和田)の宮坂清宮司(71)は28日、今季について初めて「御渡りの出現は厳しそうだ」との見通しを示した。今後の天候次第だが、今季は御神渡りが出現しない「明けの海」となりそうな状況だ。1443年の冬から続く御神渡りの記録で明けの海と判断されているのは昨季までの578年間で75回。このうち、昭和以降の95年間で39回を数える。
同日朝、宮坂宮司らが持ち込んだ温度計は氷点下7度と厳しい冷え込みだったが、毎朝観察を続けている諏訪市豊田の舟渡川河口近くから沖20メートルの湖面は解氷し、穏やかな水面には周囲の山々の稜線が映り込んでいた。
気象庁の観測では、前日27日午後1時45分に諏訪で西北西の風、最大風速13・2メートルを記録。夕方まで風速10メートル前後の風が続き、解け始めた氷が岸へと追いやられて解氷面が広がった。昨夜からの一晩で張った「一夜氷」はわずか5ミリ。2人の観察総代も残念そうで、伊藤勝規さん(61)=同市渋崎=は「今朝の気温はわりと低いのに」とため息交じり。茅野幸則さん(60)=同=は「氷点下10度が続かないと難しいんだなあ」とつぶやいた。
岸から約8メートル沖は打ち寄せられた氷がさらに冷えて凍ったため、氷は14センチと厚みを増してはいたが、そこから10メートルほど先には解氷面が迫っていた。二十四節気七十二候では、一年で最も寒い時期とされる「大寒」も次候から末候へと移り変わる頃を迎えた。
宮坂宮司は「大寒の最後の候を前にし、日中の気温が高くなり、地熱も上がって徐々に春めいている。湖面はだいぶ開いてしまったが、ここから再び全面結氷しても果たして御渡りの出現までいくかどうか」と弱気な発言。
快晴の東の空にいつにもまして美しい朝日が昇った。「何とかしてくれ」。太陽に向かい、両手を合わせた宮坂宮司が強く願った。観察は2月3日の節分まで行う。
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