ひなの体を温める抱雛を終え、母鳥のおなかの下から出たひな=11日午後3時18分、駒ケ岳付近
半世紀前に国特別天然記念物のニホンライチョウが絶滅したとされる中央アルプスで繁殖集団の復活に取り組む環境省は15日、駒ケ岳周辺で新たに5羽の雌が25羽のひなを連れていることを11日までに確認し、今年自然繁殖したひなが計45羽になったと発表した。このうち駒ケ岳周辺の5家族計34羽について、8月上旬までケージでの保護を実施。15日までにひな3羽が死亡したため、現在は5家族31羽のひなのケージ保護を行っている。
ケージ保護は、生後1カ月の死亡率が高いひなを捕食者や低温から守るため、幅1.8メートル、奥行き3.6メートル、高さ1.2メートルほどのケージに家族ごと収容する取り組み。ひなが体温調節や飛べるようになるまでの約1カ月間保護する。ひなが高山で生きるすべを母鳥から学ぶため、日中は家族をケージから出して「散歩」をさせ、周辺の高山植物などを採食させる。散歩中はライチョウサポーターなど関係者が離れた場所から様子を見守り、夕方には再びケージ内に収容する。
中アでは、ケージを頂上山荘付近と宝剣山荘付近に計5個設置。ケージ内では、動物園への導入に向けて人工飼料や小松菜などを与えている。また、テンやニホンザルなどの天敵の追っ払いや駆除なども保護と並行して実施している。
11日の取材では、最初に生まれたひな7羽が、駒ケ岳周辺のハイマツ林で散歩をする光景が見られた。雨風が強く、5メートル先も見通せないような霧が立ち込める中、ひなたちは「ピヨピヨ」と母鳥の周りを元気に走り回り、柔らかい芽や葉っぱをついばんでいた。生まれたばかりのひなは体温調整が未熟なため、体が冷えると母鳥のおなかの下に潜り込み、10~20分ほど温まる「抱雛」も行っていた。
ケージ保護終了後に予定している長野市茶臼山動物園と那須どうぶつ王国(栃木県)への保護した2家族の移送については、ひなの数や人工飼料への慣れなどを踏まえ、総合的に判断する。
ライチョウを目撃した登山者らには、遠くから静かに観察するとともに、ライチョウ観察情報収集カードへの記入や目撃情報などを同事務所(電話026・231・6573)まで寄せてほしいとしている。
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