家族で集合写真 中央・諸井吉彦さん(長野県安曇野市)
特集は「看取りの実情」です。長野県松本市に訪問診療を中心に行うクリニックがあり、終末期の患者と家族に寄り添っています。患者の1人とその家族を通じてコロナ禍の今、自宅で最期を迎えることの意味を改めて考えます。
諸井吉彦さん
11月3日、安曇野市―
諸井吉彦さん(65):
「お手、いい子だね。おかわり、いい子だね~」
諸井吉彦さん65歳。安曇野市で妻の悦子さんと一緒に暮らしています。
一日の大半はベッドの上。もう、ものを口にすることはできません。
諸井吉彦さん
諸井吉彦さん(65):
「死ぬことに対して怖さはない。どうやって死ぬかに対しての怖さはある」
諸井さんは今年・2021年3月、自宅で血を吐いて倒れました。原因は「がん」でした。去年夏の健康診断で大腸がんの疑いがあり、再検査してポリープを切除。
しかし、がんができていたのは十二指腸とすい臓でした。抗がん剤の治療が始まりましたが、9月、十二指腸が破裂して緊急入院。「ステージ4」と診断されました。
諸井吉彦さん
諸井吉彦さん(65):
「余命は数週間から、もっても3カ月。1カ月かな、2カ月かな、3カ月かなって。ある程度、いろんな毎日を考えて、その中での最後の告知ですから、『ああ、やっぱりな』と。何年も家族に迷惑をかけたり痛い思いをするよりも、はっきりとXデーというか、だんだん迫っていると分かると、身の回りを整理したりとかができる。やらなきゃいけないなって気持ちになりますので、自分にけじめがついた。言葉が悪いけど、ほっとした」
悦子さんと結婚し、3人の子どもに恵まれた(提供写真)
諸井さんは静岡県浜松市の出身。高校卒業後、電気機器販売店などで働き、悦子さんと20歳で結婚。3人の子どもに恵まれました。37歳の時、仕事の都合で安曇野へ。退職後は妻と2人、ゆっくり過ごそうと思っていました。
最期を覚悟できたのは、苦楽を共にしてきた家族がいたからです。
妻・悦子さんと
諸井吉彦さん(65):
「一緒にかみさんがいるだけで僕はほっとするんですよ、顔を見るだけで。一緒にやってきて、女性として、女房として強くなってきて『ああ安心だな』と。思ったことを言える、飾らない、理想の家族になってくれたから、気持ち的に離れていることが1人もいない。そんな良いことないね」
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